2017年3月25日土曜日

【珈琲の友だち】貴菓子と呼びたい「飛騨娘」

さぁ、ツイッターで予告した通り、太郎の次は娘です。第一製菓株式会社(岐阜県岐阜市琴塚4丁目5番10号)さんの「飛騨娘」。

見た目は地味な岐阜のお菓子


パッケージを見ても、ふりがなが見当たらないので、「ひだむすめ」なのか「ひだっこ」なのか不明です。同社のホームページで商品情報を確認しても、ヒントは出てきません。ややミステリアスなところに、駄菓子らしくない高貴な空気が漂います。


今どきのJKにも食べさせてみました。パッケージを見たときは無反応だったものが、コーヒーに2個付けて出してあげたら「えー!なにこれ、おいしぃ~!!」と言うのです。やっぱりか。やっぱりそうか!

第一製菓さんの商品ページには、昔から飛騨地方にある「豆板」にちなんで作った旨が書いてあります。優れたところは、見た目の和風具合と、お菓子自体の実相のミスマッチ。田舎娘だと思って話しかけてみたら、和洋の教養を備えた、素朴でもキリッとした、中身のある女性。向き合って語らいながら口に運ぶコーヒーのおいしいこと。別れがたい。また会いたい。何度でも会いたい。たとえればそんな感じでしょうか。

サクカリ食感、甘さの奥からにじみ出るコクの恍惚


そう。芸術品です。ピローに包まれた一片一片に世界があります。原材料の、落花生、砂糖、水飴、オリゴ糖、食塩という構成からしたら、普通は湿気そうなもんです。それが、全然湿気ていない。固定ファンがいるから回転がいいのか?いや、それだけではないでしょう。技です。製造工程・品質管理です。

どのコーヒーも合うが、お勧めはスマトラかモカ


グァテマラのような滑らかな舌触りのコーヒーや、マイルドなコロンビアでも、万人受けするブラジルでももちろんおいしいと思います。飛騨娘と一緒に楽しむコーヒーは何がいい?と聞かれれば、私はスマトラ(マンデリン)の中煎りから中深煎りか、モカの浅煎りから中煎りくらいと答えます。でも、こんなのは個人の好みの問題ですからね!狭苦しく考えてはコーヒータイムがつまらなくなります。インスタントだっていいんです。

飛騨娘の裏面。紋切り型のはずのあいさつ文の最後に「末永くご愛用のほどをお願いいたします」とある。ありふれた文章。それなのに、うんうん、と頷きたくなる。今日も幸せなコーヒータイムだった。

鮮度の悪いコーヒーで勝負はできない

某大手コーヒー商社のスペシャルティコーヒーのブランド創出と販促の支援をしていた経験から得たものがたくさんある。そのうちのひとつが、表題の通り、コーヒーは鮮度が命、ということである。

鮮度は何を指すか


コーヒー豆の鮮度というときに、大きく分けて、生豆の状態での鮮度と、焙煎してからの鮮度がある。生豆の鮮度というのはなかなか評価が難しい。銀座の名店「カフェ・ド・ランブル」のように、約70年も前から熟成コーヒーの魅力にとりつかれ、生豆をエイジングさせてから焙煎して供してきた珈琲店もある。では、このようなオールド・コーヒー(ランブルの関口一郎氏は著書『銀座で珈琲50年』のなかで「オルド・コーヒー」と表記)がまずいかと言うと、とんでもない。無論、あてずっぽうでエイジングがうまく行くわけがないのは当然で、この熟成プロセスで失敗すれば、その後どう的確に焙煎してもダメだ。ノウハウを持ったコーヒー店のオールド・コーヒーがいかに旨いか理解するには、百聞するより、カフェ・ド・ランブルのコーヒーを飲むのが近道だ。

焙煎後の鮮度


おいしいコーヒーを商品として提供するには、生豆は、獲れたてであるか熟成されているかよりも、傷んでいない、良好な状態であることが前提となる。問題は、焙煎後どのくらい時間が経過しているか。酸化しているか。焙煎したコーヒーをできるだけ長い時間鮮度保持するために、焙煎後のコーヒー豆から出る炭酸ガスを外に出し、逆に酸素は入らないようにする「バルブ式」というパッケージが採用されていたりする。また、真空パックをしたり、炭酸ガスと酸素を両方とも吸収するコーヒー専用の脱酸素剤を使って鮮度を保持したりする。だから、焙煎後何日で、ということは無条件に設定できないが、炭酸ガスと酸素によって味が劣化していないことが重要だ。

グラインド後の鮮度 


もうひとつ重要な鮮度の軸が、コーヒー豆を挽いて粉にしてからの劣化だ。コーヒーは、挽いてしまうと20分も経たないうちに香りの70%以上が失われる。そうなっては、いくらこだわり技術を以て淹れても、おいしいコーヒーにはならない。商品撮影のために、スタジオの最寄りのコーヒーチェーンに駆け込んで、袋入りで販売しているグラインド済みのコーヒー、つまりコーヒー粉を買ってきて撮影しようとしたことがある。が、ダメだった。ドリップのシーンなのに、お湯をかけても膨らまないのだ。表面がへたっている。このために、良いドリップシーンを撮るために、時間がない中であちこちへ駆けまわり大変苦労してしまった。

コーヒーを看板にしつつ


いくら食品やほかの飲料とともに小売りを行っているといっても、一応「コーヒー」を銘打ちながら、鮮度の落ちたコーヒーを平気で販売している店、企業が少なくない。だが、おうちカフェであっても「最高」を追求しないなら、標準的な珈琲の中でも豆選び、保存、焙煎、パッケージのすべておいて十分すぎるほどの経験とノウハウを持っているUCCのレギュラーコーヒーをスーパーで買う方がいい。適度なこだわりなら、それで十分だ。インスタントコーヒーだって、UCCのこだわり路線の商品は、少なくとも一杯目は唸るほど旨かったりする。そうじゃなく、本当においしいコーヒーにこだわりたい、量販品の上を行きたい人は、やはり、SNSや雑誌や巷の口コミなどあらゆる手段を使って、おいしいコーヒーを探し求める。コーヒーを看板にするなら、あるいは看板の一部に使うなら、商品づくり、鮮度のための回転数のアップに、必死に取り組むべきだろう。

コーヒーは、うんちくだけではおいしくならない。同時に、うんちくなしにスペシャリティ・コーヒーを売るのも難しい。 売る側に専門性が要求される商品だ。コンビニコーヒーの大成功が言われて久しい今も、異業種がコーヒーを上手に売っていると思う場面に遭遇した記憶がない。コーヒーマンは概してあくが強いから、表面的でない異業種連携はなかなか難しいのかもしれない。だが、そのような、煙たがられがちの、気難しく熱いコーヒーマンたちの世界が、私は好きだ。

2017年3月24日金曜日

コーヒーに合う愛しの駄菓子「蜂蜜太郎」

最近、ドラッグストア「ウエルシア」(イオングループ)の店頭を見るのが楽しみで、よく行く。精査はまた「フード&ドリンク・ファンジン」の方で書こうと思うが、とにかく頻繁に行く。最寄りの店舗は夜の12時までやっていてくれるので、うれしい。

ウェルシアでは、薬や応急処置のためのアイテムが買えるのはもちろん便利なのだが、最近一番じっくり見て回るのが食品コーナー。ドラッグストアの食品コーナーなんて、とバカにしてはいけない。

ウエルシアでお菓子をGETする


いや、語弊があるかな。GETといってももちろん購入だ。サークルKサンクスがファミマになってしまった際、大好きな高千穂牧場の「カフェ・オ・レ」が一時消えて落胆したのだが、その足でウェルシアに行ったら冷蔵コーナーに置いてあって、にんまり。それにしても、よくマーケティングされているなぁと感心する。(※ファミマでもその後、高千穂のカフェオレは復活。)

そのお菓子、太郎


掘り出し物はあるかなーと探していて、目が釘付けになったのはこれだった。


夕方の薄暗い部屋で撮ったため、明るさ調整してもやや飛んでいるがご勘弁を。
なんと、景気よく200gも入っている。

うまい


ちょっとかりんとうテイストでもある。見て分かる通り、一片一片は小さい。不揃いだが、長さ3㎝弱かと思われる。歯ごたえはしっかりめで、噛むと、カリカリと音がする。過不足ない適度な甘さと、ほんのり感じる塩味。油分。これらが相まって、ブラックコーヒーを一層おいしくしてくれる。コーヒーにミルク・砂糖を入れる入れないはもちろん嗜好の問題だが、十分甘いお菓子を食べるときには、やはりブラックがおススメだ。

ハチミツ二郎との関連性 


パッケージの表面に、

ウサミ 

とあり、その下に大きく

太郎 

と表示されているので、てっきり「太郎」というお菓子だと思い、我が家では知り合って以来「太郎、太郎」と呼んでいたが、あるとき家族が「太郎じゃないよ。裏を見てごらんよ。”はちみつ太郎だよ”」というから驚いた。いや、できることなら太郎のままにしておきたかったが、裏面を見ると現実を突きつけられた。たしかに「蜂蜜太郎」と書いてある。

ここで私の中に疑問が湧きあがった。「東京ダイナマイトのハチミツ二郎氏は、蜂蜜太郎が好きすぎて、あの名前にしたんじゃないか!?」というものだ。そうなれば、蜂蜜太郎とハチミツ二郎は兄弟である。

しかし、どんなにググっても、私の調べた範囲では、兄弟の杯を交わした証拠は発掘できなかった。

蜂蜜太郎よ永遠に


こんな小見出しをつけると安易で、原案は、星条旗よ永遠なれとか、ストロベリー・フィールズ・フォーエバーか、とか自分でツッコミを入れてしまうのだが、実際のところ素朴な気持ちである。

製造している 「株式会社宇佐美製菓」さんは名古屋の会社だ。昔、リサーチャーだった私は、毎日統計データとにらめっこしていて、ある日、愛知県が駄菓子の生産日本一であることを知った。あの瞬間のときめきは今も忘れない。

「蜂蜜太郎」は、駄菓子と呼ぶにはあまりにも「駄」なところがない。いや、どの駄菓子も大衆の生活を愛おしみながら作られているという点でとても尊いのだが、蜂蜜太郎に「駄」は似合わない。

紅茶にもお茶にも 


筆者は今日、コーヒーの前提で書いたが、蜂蜜太郎は、他の飲み物にも合う。紅茶・緑茶だけでなく、おそらくはマテ茶にも、ルイボスティーにも、ミントティーにも、もっと言えば、白湯にすら合うだろう。宇佐美製菓さんに感謝しつつ、今日は徳島コーヒーワークスさんのモカ・イルガチャフェとともにいただく。この記事を書いているうちに、すっかり冷めてしまったが。