■一冊の資料
先日、同社が発行している「COFFEE BRAND BOOK」 なるものを入手する機会があった。
株式会社鈴木コーヒー 発行「COFFEE BRAND BOOK」 |
モノトーンの表紙は、洗練されたデザインだ。目次をめくると、左におそらくは初代社長、右に二代目社長(現会長)のポートレイトが並べて載せられている。めくっていくと、同社のコーヒーへの思い、美学、価値観が見えてくる。13・14ページでは見開きでコーヒーの伝搬経路がわかる地図。筆者も昔大手コーヒーメーカーの依頼で世界のコーヒー発祥から伝搬の歴史を地図にまとめあげたことがあるが、鈴木コーヒーの地図はすっきりわかりやすく解説されていて楽しい。15~18ページの4ページは、珈琲の歴史年表。筆者も昔、前掲のプロジェクトでコーヒーの歴史を図説し一枚のポスターにしたことがあるが、鈴木コーヒーさんのまとめは、特にボストン茶会事件以降の、コーヒー抽出器具や戦前・戦中の動きも入れ込まれており、同社の視点の広さ、珈琲と、珈琲を楽しむ人々への思いの深さを窺わせる。コーヒー屋さんの思いの詰まった資料として、大事に保存させていただくことにした。
■企業ジャック
はてさて、これは引用や要約を書いていいものかどうか迷うので詳細は控えるが、21~26ページでは、特命係長只野仁や、島耕作を思わせるような(?)企業マンガが収録されている。といっても、1963年に創業した同社の歴史を物語る実話だ。想像を絶する試練を乗り越えて今がある。コーヒーには、即物的な意味での旨さと、醸し出す世界観に由来する旨さとがある。かつては断崖絶壁まで追い詰められたことがある企業が、冒頭に紹介したような4000店以上の取引先を獲得し、地域において他の追随を許さない位置を獲得するには、容易には分析できないノウハウの蓄積があるに違いない。
■「鈴木コーヒーが推す”究極の一杯”」
この項の見出しは、冊子からそのまま引用させていただいた。36ページ。見出しの下には「オセアニア方式ペーパーブリュー」とある。ぜひやってみようと思った理由は、明記されている適温が「87℃」であったこと。これは経験的にすんなり納得のいく温度だった。
株式会社鈴木コーヒー 前掲資料 35・36ページ |
この通りに実践してみた結果からいうと、非常においしく抽出することができた。たしかにおススメだ。
事前に鈴木コーヒーさんに了解をいただいたものの、解像度の高い画像で紹介することには抵抗があるので、 淹れ方については、当該ページより引用として書き起こしておきたい。
1.お好きなコーヒー豆16.5gを中挽き~中細挽き(グラニュー糖ほどの細かさ)にし、ペーパーをセットしたドリッパーに入れる。
2.(1投目 50cc)お湯を注ぎ始めたらタイマーをスタート。87℃のお湯を50㏄注ぎ、スプーンで縦横5回ずつお湯を馴染ませるようにかき混ぜる。
3.(2投目 80cc)タイマーが30秒になったら、「の」の字を書くようにお湯を合計130㏄まで注ぎ入れる。
4.(3投目 120cc)合計250㏄になるよう注ぎ、2と同様にスプーンで再度かき混ぜる。
5.その後、ドリッパーをスプーンで一度叩き、お湯が落ちるのを待てば、究極の一杯の完成。
[出所]株式会社鈴木コーヒー「COFFEE BRAND BOOK」36ページ
最近エチオピア(イリガチェフ)の浅煎りを飲み続けているので、この毎日のコーヒーを使い、鈴木コーヒーさん推しの方法通りに淹れてみた。まず、濃いのに雑味が感じられない。適度な酸味がありフルーティでコクがある。香りに深みと広がりがある。試しに4割くらいを別のカップに移し、多めのきび砂糖と先日十数年ぶりくらいに買ってきたクリープを入れて飲んでみた。こちらもうまい!もちろん、クリープ特有の粉乳くささみたいなものはあるが、その匂い自体に郷愁を感じる筆者には、普段飲まない甘い、ミルク入りも格別のものとなった。
手順を読んだとき、87℃適温には経験上疑いなし。しかしかき混ぜて大丈夫?雑味は出ない?いや、そういえばプロがドリップしながらさりげなくかき混ぜているところをたしかに見てきた。あれでいいのか?など逡巡したが、やってみたら事前の心配は杞憂に終わった。おそらくは、熱湯でかき混ぜたら雑味は出るだろう。温度が重要なはず。理にかなっているからおいしく仕上がるということだろう。
沸かす器具の大きさにもよるし室温にも大きく依存するので一概に言えないが、4月頭の今。沸騰させて、少し放置すると、87℃になった。毎回温度を測るのは大変でも、何回かやるうちに、大体勘がつかめそうだ。来客の際には、「見せる・魅せる」ために手順通りにやり、毎日のドリップには勘でもいいかも?
筆者は、鈴木コーヒーさん推しのこの方法をもとに、日々のコーヒーを一層おいしくいただいていきたい。
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